2012年新年のご挨拶
毎年、年初に本誌上で皆様にご挨拶を差し上げていますが、ここ数年明るい話題でお話を始めさせていただいたことがないように思います。そして昨年も悪材料には事欠かない一年でした。東日本大震災に始まり、想定外の欧州債務危機、それに伴うリスク・マネーの日本への逃避が引き起こした歴史的な円高、それらに追い討ちをかけるようなタイ大洪水。2007年に顕在化したサブプライム・ローン問題に端を発したリーマン・ショックから風速を強めてきた日本経済への逆風はやむことがありません。自然災害はともかくとして、2007年以来の経済面での一連の悪材料の頻発を振り返ってみますと、世界中の資本主義経済は大きな「転換点」、すなわち蓄積した歪みの修正期を迎えていると考えざるを得ません。つまり、この困難でボラティリティの高い状況は歪み修正が終わるまで常態化する、しかも構造問題であるだけに長期にわたって継続する、という前提の下に今後のビジネス展開を考えるべき時代に我々はいると言えるのではないでしょうか。やまぬ逆風は強みを見直す契機になる、これは歴史が証明してきたことです。
事実、前代未聞の苦境の中にあっても「危機は好機」を地で行く日本企業は多数存在します。世界経済の構造自体が大きな転換期の渦中にあるのであれば、エレクトロニクス業界もモノづくりの手法を転換すべきでしょう。もちろん手法転換は、持てる強みを活かすための転換であるべきです。新興諸国や中国、韓国などの台頭も視野に入れたとき、日本企業の強みは、蓄積してきた「総合力」と優れた「サプライチェーン」の存在ではないでしょうか?
シノプシスは、EDAの側面から、日本の製品開発の底力の発揮を支援するためのソリューションを展開しています。
システム開発全体を支援
最近のマーケットの趨勢を眺めて見ますと、スマートフォンを始めとして、状況に応じて最適な利用ができるスマート化された製品がヒットしています。これらのスマート製品では、優れた性能や機能を実現するという点でソフトウェアが重要な役割を果たしており、製品開発手法についても変化が求められています。また、こうした製品に限らず、あらゆる機器は、複数の供給元から提供されるハードウェア(HW)部品やソフトウェア(SW)部品をシステムとして組み上げて実製品として仕上げられていきますので、開発プロジェクトにおいてはHW/
SW協調設計手法の確立や、異なる部署・会社間の連携すなわちサプライ・チェーンの強化が特に重要です。日本には、優れたサプライチェーンを構成する元となる企業や技術が集結していますから、その強みを活かさない手はないでしょう。シノプシスは、優れたサプライ・チェーンを構築できる理想的な開発環境を実現するために、仮想プロトタイピング・ソリューション Virtualizerによるシステムレベル開発環境を提供しています。従来の典型的なシステム開発では、HW開発、SW開発、インテグレーション、テストは別々の開発環境で行われています。また、SW開発はHW開発が終了後に行われています。
仮想プロトタイプの活用により、こういった非効率な開発体制は大きく変化します。開発のインフラとして仮想プロトタイプを共有することにより、先ほどのそれぞれの開発作業を共通の開発環境下で行うことができるため、サプライ・チェーンを構成する各開発企業間での設計データの交換、設計仕様の相互理解などがスムーズになり、開発期間を大幅に短縮できます。サプライチェーンの各構成員は、配布された仮想プロトタイプをインストールして、それぞれの目的に合わせて利用を開始し、従来より数ヶ月も早い段階から開発作業に着手できるようになります。またHAPSを中心としたFPGAベースHWプロトタイピング・ソリューションをご活用いただければ、再利用が容易な、実機レベルの高速実行環境を構築でき、実チップのリスピン・リスクも低減できます。
シノプシスは、この仮想プロトタイピング・ソリューションも含めて、業界ナンバー・ワンのシステムレベル設計ソリューションを提供しています。SPW/System
Studioでアルゴリズム/アーキテクチャ開発を短期化し、SoC上にある差別化と無関係な機能ブロックはDesignWareが提供するインターフェイスIP、アナログIP、SoCインフラストラクチャIP、エンベデッド・メモリーIPなどを用いて迅速に組込み、差別化のキーとなる画像処理や通信機能のブロックはSynphony
C Compilerで、特定のアプリケーションに特化した特殊CPUはProcessor Designerで生成できます。そして、Virtualizerを使用して構築した仮想プロトタイプでシステム全体の検証やSW開発の前倒しを実現できます。HWをRTLに実装した後は、Synplify
Premier、あるいはDesign CompilerやIC Compilerを用いてターゲットのFPGAやASICに合わせた更なる最適化とインプリメントを実行できます。
Galaxyフロー、Discoveryフローの拡充
シノプシスには、業界ナンバーワンの採用実績を持つIC Compilerを中核としたGalaxyインプリメンテーション・フローがあります。優れたシステムを短期間で作成した後は、高度なインプリメンテーション・ソリューションを用いて確実に実装し、実際の製造につないで行かなければなりません。Galaxyフローの一層の改善・強化はシノプシスの重大な責務です。より高品質なRTLデータを短期間で作成し、以降のインプリメンテーション・フローに向けたより良いスタートポイントを実現するためのDC
Explorerの提供開始はその一例です。また、これほどデザインが大規模化してくると、タイミング・サインオフのシナリオが増大、IP再利用も一般化してくるため、インプリメンテーションの段階でのサインオフ・ドリブンECOは避けて通れません。そこでPrimeTimeに、1つのタイミング・シナリオ変更が別のシナリオにどのような影響を与えるかを解析できるECO
Guidanceテクノロジ、実行可能なすべての修正オプションを短時間で評価できるCalibrated Estimationテクノロジ、大規模階層デザインに対応するためのHyperScaleテクノロジを追加しました。その他のツール分野でも、先進技術を多用した機能改善を積極的に追加し、IC
Compilerによる業界最先端のインプリメンテーション・フローを継続的に強化しています。
また、デザインの大規模化に伴って検証難易度も指数関数的に増加してまいりますので、この問題への対応もシノプシスの重要なミッションです。当社では、VCSを中核としたDiscoveryベリフィケーション・フローの強化により開発イタレーションをなくし開発コストを最小化するための技術開発を非常に重視しています。マルチコア・テクノロジや優れた検証メソドロジの提供による検証業務の効率化はもとより、限られた時間の中で十分な検証を達成するためのカバレッジ向上テクノロジなど、検証に必要な革新的技術の開発を継続的に行ってまいりました。その結果、世界の大手半導体メーカー10社の32nm以降の先端デザインでは90%以上、44社の45nmデザインでは60%以上の検証ソリューションとしてVCSをご採用いただけるに至っています。
継続的なR&D投資
このように、今後重要となる技術分野の開発にあたって常に先手を打ち続けて来た結果として、シノプシスは、世界売り上げ150億ドルを越す業界ナンバーワンの座を不動のものとすることができる企業となりました。そして今も尚、売り上げ高の30%以上をR&Dに、それに加えて更に相当額を革新技術の買収に投資するという企業文化を堅持しております。こうしたEDA業界で抜きん出た技術志向の企業戦略こそが、皆様に最良のソリューションを継続的にお届けできる源泉となっています。
経済の変化、それに伴う市場の変化を敏速に捉えることは肝要です。それは困難な作業ですが可能でしょう。しかし、それは企業の経営幹部の仕事です。そして変化に対する経営判断が為されたとき、求められるのはそれらの変化への対応力です。その準備責任は経営企画室の外、すなわち製品開発の現場にあるのではないでしょうか。経営判断がなされた時点で即時対応しなければならない開発現場の皆様をいつ何時でも支援させていただく準備が、シノプシスではできています。シノプシスは、常に開発者の皆様と共にいます。共に闘います。勝利を勝ち取るその日まで。
本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。
日本シノプシス合同会社
社長 藤井公雄